- 調律の準備
4.1 測定器の扱い方
・調律には尺八の音程がどのような状態にあるか確認する測定器が必要です。勘で行
ってはいけません。
価格は4〜5千円程度で楽器のお店に行けば求めることが出来ます。
・調律の基準周波数は尺八は温度が上がれば音程も高くなります。これを考慮し440
ヘルツで合わせます。許容範囲は下図右赤の範囲(−15セント〜+15セント)です。
4.2 尺八の音程確認
・音程の確認は尺八が冷えている時は音程が下がっていますので尺八が暖まってから
確認してください。
・乙ロ、甲ロ、ハの3つの音程のバランスを確認します。
ハは全ての孔塞いだ状態の音程で以後ハはこの状態を示します。
・各音程の状況を確認します。(表に纏め調律前後を記録しておくと良いでしょう)
- 調律
尺八の基本的な乙ロ甲ロハ3つの音が合っているかどうかが重要で尺八の長さ
を決定づけるものです。これを最初に確認する必要があります。
5.1 乙ロ甲ロハの音程が高く他の音程はほぼ合っている場合
@全孔を塞いだ時の長さが全長が短い事を意味します。従って尺八の先端を長くし
乙ロ甲ロハの音程を低くします。下図A
A尺八全体を長くするため使用していない尺八の先端を少し長めに切断したものを
先端に接続し尺八全体を長くします。
B先端部品の長さが適切であるかどうかを尺八の先端に切断した部品を仮接続して
確認します。
C音程の確認は、切断した部品を尺八の先端に仮接続・テープ等で固定し、乙ロ、
甲ロ、ハの3つの音を確認しながら、先端部品をグラインダーで削り薄くしなが
ら確認・調節していきます。
D音程確認は、時間を置き先端部品と尺八の温度が常温になったころを見計らい測
定します。
E接続面の方向、相互の孔の位置等を確認し位置ズレが無いようにマークしそれを
目安に接着します。
F接着は接着時間に余裕のある木工用ボンドを使用し、両面の内側を薄く外側をや
や厚く塗り接着します。この作業は直接指で行わないとうまくいきません。内面
を厚く塗ると筒の内側に接着剤が出っ張ります。
G接着後は尺八スタンドに立てた状態で1日以上おきます。
H筒先の内面に段差が無いように太さを合わせカシュで塗装します。
5.2 乙ロ甲ロハの音程が低く他の音程はほぼ合っている場合
尺八全体が長いのが原因ですから尺八を短くして音程を高くします。
5.2.1 1孔と先端との間に共鳴調整孔を空ける(下図Bの@)
@尺八の全長を短くし音程を高くすれば良いわけですが、1孔と先端との間に共
鳴調整孔を空け音程的には全長を短くしたようにします。
A最初に小さい孔を空け確認しながら孔を大きくし合わせます。
Bこの方法は簡便で音程の調律も容易で他の孔の音程にも影響を与えません。
5.2.2 尺八の全長を短くする
@尺八の先端を少しずつ切り詰める方法(下図Bの@)。
A全体の姿・寸法を変え無いで先端部の孔の形状を変える方法等があります。
(下図BのA)(下図BのB)(下図BのC)
5.4 全体に音程が低い場合(一般的にこの傾向が多い)
全体の音程が低いという事は歌口からの孔の位置が全体に長い事を意味します。
従って、尺八の歌口近い方を短くすれば全体としてば音程が高くなります。
@尺八の歌口から6センチ程度の所でやや短めに2ケ所切断し、尺八を短くするこ
とで全体の音程を高くします。歌口に近い所を切断するのは接着・塗装など容易
にするためです。なお下図で切断5mとありますがそれ以内であれば個別の調律
か吹き方で対処する事を意味します。
A切断する間隔2ケ所をマーカを使ってマーキングします。
B尺八を万力等を使って固定し、金鋸を使い尺八を回しながら切断します。
C接続面をヤスリまたはグラインダーで平らにかつ滑らかにします。
D尺八はマーキングを目安にズレないようにテープで巻いて仮接続し音程を確認し
ます。
E音程を確認しながらグラインダーで切断間隔を大きくして行きます。有る程度期
待値に近づいたら時間を置き尺八の温度が常温になったころを見計らい測定、確
定します。
F接続面の方向、相互の孔の位置等を確認し位置ズレが無いようにマークした接続
ポイントを目安に接着します。
G接着は接着時間に余裕のある木工ボンドを使用し、両面の筒内に近い方を筒内に
ボンドがはみ出さないよう内側を薄く外側をやや厚く指で塗り接着します。
H接着後は尺八スタンドに立て2日以上おきます。
I接続面の表面の凹凸を無くし、接続面を巾7mm程度の和紙をボンドで接着しま
す。乾燥後和紙の上にカシュを塗り仕上げます。
(下図方法2で仕上げる方法もあります)
J内面の凹凸があれば紙ヤスリを巻いた棒で整え、筒内をカシユで塗装します。
調律のはじめに
尺八の調律は極めて技術的かつ経験的な要素があります。以下にお示しするのは私の経
験に基づくものですが、尺八個々の特性も踏まえて調整するもので、この資料は調律の考え方の拠り所としてお使いいただくもので参考としてお使い下さい。
5.3 全体の音程の高い場合
全体の音程が高いという事は歌口からの孔の位置が全体に短い事を意味します。
従って、歌口に近い方を長くし、全体として音程を下げす。
@この場合筒の中継ぎをすることになりますが、筒の材料・筒の継部分の接着と仕
上げ・筒内の仕上げ等様々な問題が生じます。(下図)
Aこの方法は素人の方にはお勧めできません。どうしてもというならばプロの方に
お願いしましょう。
5.5 古い尺八の音程について
最近の尺八は洋楽と音程を合わせそれを律管として制作しています。
一方古い尺八は尺八の寸法で制作しています。これを寸管と呼びます。
寸管の場合は、高音部、特にヒが低い尺八が多いようで洋楽の音階とは大分異な
る場合が多いようです。この特徴は尺八が長くなるほど違いが出てきます。